4.5 参考文献と引用

参考文献目録を出力文書に含める方法の概要は, Xie (2016)Section 2.8 を見るとよいでしょう. 基本的な使用法として, YAML メタデータの bibliography フィールドに文献目録ファイルを指定する必要があります. 例えばこのようにします.

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output: html_document
bibliography: references.bib 
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この BibTeX データベースは *.bib という拡張子の付いたプレーンテキストとして与えられ, ファイルに文献アイテムがこのようなエントリで含まれています.

@Manual{R-base,
  title = {R: A Language and Environment for Statistical
           Computing},
  author = {{R Core Team}},
  organization = {R Foundation for Statistical Computing},
  address = {Vienna, Austria},
  year = {2019},
  url = {https://www.R-project.org},
}

文書内では @key という構文で文献アイテムを直接引用することができます. key 部分はエントリの最初の行にある引用キーのことです. 上記の例なら @R-base です. 括弧で囲んで引用したいなら, [@key] を使います. 複数のエントリを同時に引用するなら, [@key-1; @key-2; @key-3] のようにセミコロンでキーを区切ります. 著者名を表示しないのなら, [-@R-base] のように @ の前にマイナス記号を付けます.

4.5.1 引用スタイルの変更

Pandoc は Chicago 式の著者名-出版年形式の引用スタイルと参考文献スタイルをデフォルトで使います. 他のスタイルを使うには, 例えば例のように, メタデータフィールドの csl で CSL (Citation Style Language) ファイルを指定します.

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output: html_document
bibliography: references.bib
csl: biomed-central.csl
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必要としているフォーマットを見つけるには, Zotero Style Repository, を使うことをおすすめします. これは必要なスタイルの検索とダウンロードが簡単にできます.

CSL ファイルは個別のフォーマット要件に合うようにを修正できます. 例えば “et al.” の前に表示する著者の人数を変更して短縮できます. これは https://editor.citationstyles.org にあるようなビジュアルエディタを使って簡単にできます.

4.5.2 引用していない文献を参考文献に追加する

デフォルトでは参考文献には文書で直接参照されたアイテムのみ表示されます. 本文中に実際に引用されていない文献を含めたい場合, notice というダミーのメタデータフィールドを定義し, そこで引用します.

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nocite: |
  @item1, @item2
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4.5.3 全てのアイテムを参考文献に掲載する

文献目録のすべてのアイテムを明示的に言及したくないが, 参考文献には掲載したいというなら, 以下のような構文が使えます.

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nocite: '@*'
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これは全てのアイテムを参考文献として強制的に掲載させます.

4.5.4 参考文献の後に補遺を掲載する (*)

デフォルトでは参考文献は文書全体の最後に掲載されます. しかし参考文献一覧の後に追加のテキストを置きたいこともあるでしょう. 一番よくあるのは文書に補遺 (appendix) を含めたいときです. 以下に示すように, <div id="refs"></div> を使うことで参考文献一覧の位置を強制変更できます.

# 参考文献

<div id="refs"></div>

# 補遺

<div> は HTML タグですが, この方法は PDF など他の出力フォーマットでも機能します.

さらによい方法としては以下の例のように bookdown パッケージ (Xie 2021b) を使い, 補遺の開始前に special header # (APPENDIX) Appendix {-} が挿入できます.

# 参考文献

<div id="refs"></div>

# (APPENDIX) 補遺 {-} 

# 追加情報

これは「補遺 A」になる.

# さらにもう1つ

これは「補遺 B」になる.

LaTeX/PDF および HTML フォーマットでは補遺の付番スタイルは自動的に変更されます (たいていは A, A.1, A.2, B, B.1, … という形式です).

参考文献

———. 2016. Bookdown: Authoring Books and Technical Documents with R Markdown. Boca Raton, Florida: Chapman; Hall/CRC. https://bookdown.org/yihui/bookdown.
———. 2021b. Bookdown: Authoring Books and Technical Documents with r Markdown. https://CRAN.R-project.org/package=bookdown.