10 文献引用の詳細設定
10.1 (u)pBibTeX を使う
.bst
ファイルのスタイルを使いたい場合, (u)pBibTeX が必要であり, そのためには現在の R Markdown および rmdja の仕様では, YAMLフロントマターとグローバルオプションを変更する必要がある. 例えば jecon.bst
を使いたい参考文献リストを出力したい場合, YAMLフロントマターは以下のような記述となる.
output:
rmdja::pdf_book_ja:
citation_package: natbib
citation_options: numbers
biblio-style: jecon
bibliogpraphy: citations.bib
BibLaTeX では citation_options
にスタイルまで指定していたが, natbib
を選択した場合 biblio-style
に .bst
ファイルを指定し, フォーマット関数の citation_options
引数は natbib.sty
に対するオプションを指定する項目となる (トップレベルの natbiboptions
でも可). 上記の例では numbers
を指定しているため本文中の参照トークンは [1]
, [2, 3]
のような番号形式となる. デフォルトは authoryear
, つまり「著者 - 出版年」形式である.
次に, 最初のチャンク, またはコンソールでグローバルオプションを変更する.
options(tinytex.latexmk.emulation = F)
この状態で knit または build すれば .bst
ファイルのスタイルが適用される.
このような操作が必要な理由を説明する. rmarkdown は tinytex というパッケージでインストールされたスタンドアローンな LaTeX 処理系で PDF を生成している. しかしこれは (u)pBibTeX の使用が想定されていない. (u)pBibTeX は日本語コミュニティで開発されたマルチバイト文字対応版 BibTeX だから, rmarkdown 開発メンバーたちがこれらの存在に詳しくないのも仕方ないことだ (YiHui 氏は中国出身だが, 中国語圏では BibLaTeX を使うことが多いようだ). 冒頭のチャンクで options(tinytex.latexmk.emulation = F)
を指定することで, 自分のマシンにインストールされた, おそらくあなたが普段使っているであろう LaTeX 処理系に処理させることができる. この方法では latexmk
コマンドを使用してPDFの生成が行われる, その場合TeX Wikiに記載のあるように, 日本語出力のため .latexmkrc
ファイルが必要となっている. rmdja では natbib
を指定した場合に自動でカレントディレクトリに .latexmkrc
をコピーするようにしている. しかしログが残らないなどデバッグしづらいところがあるため, このやり方はやや使いづらく LaTeX に対するそれなりの知識を要する. たとえばこの説明を読んで初めて latexmk
の存在を知った, そもそも LaTeX をどうインストールしたか記憶がない, といった人は慣れるまで大変かもしれない.
10.1.1 (TODO) pandoc-citeproc
と CSL について
TODO: せめて日本語文献の姓名表示をなんとかしたスタイルを用意する
10.1.2 (WIP) BibLaTeX について
BibLaTeX の全てのオプションに対応しているわけではないので詳しいことは BibLaTeX のドキュメントを読んでいただきたい. 残念ながら, 日本語の情報は非常に乏しい. ここではよく使う style
のことだけ言及する.
citation_packages
/biblatexoptions
で指定できるのは, インクルード時の style=
に指定できるものに対応する(表 10.1). つまり, 引用文献の見出しや, 表示順といった設定である. これは引用リストと本文中の引用子のスタイル両方に影響する.
名称 | 概要 |
---|---|
numeric
|
‘[1]’ のような番号 |
alphabetic
|
著者名の略称+出版年2桁 |
authoryear
|
著者-出版年形式, natbib の標準と同じ |
authortitle
|
著者名のみ, リストでは出版年は後置され, 引用子では脚注になる |
verbose
|
authortitle と同じだが, 引用子にリスト同様の内容を出力する |
reading
|
個人的なリーディングリスト向け. ファイルやメモ欄も出力する |
draft
|
.bib ファイルのIDで表示. 名前通り下書き |
debug
|
.bib の全フィールドを表示
|
その他 apa
, ieee
など特定の学会が使用するスタイルも用意されているが, これらは基本欧文しか想定していないし, アカデミックの事情に詳しい人しかこれらの使用にこだわらないだろうから詳しくは解説しない. これらを含めたそれぞれの出力例は https://www.overleaf.com/learn/latex/biblatex_bibliography_styles に一覧があるのでそちらを参考に. なお, 引用リストのスタイルと引用子のスタイルを個別にすることはできる (bibstyle
/citestyle
)
現時点では各分野の学会で日本語文献に対応した BibLaTeX フォーマットを配布しているという情報は見つけられなかった. 参考として私のブログで対応のヒントについて書いた22.
TODO: その他の非ラテン文字, キリル文字, アラビア文字 ヘブライ文字等は?
なお, 普段文献管理ソフトを使っていないが, 数本程度の文献を引用リストに載せたい利用者は, biblatex
の構文を利用して書くのがよいかもしれない.