5 結果

FE, RDなどの内生性を想定しないパネルデータの方法と, Arellano-Bondの階差GMMなどの動学パネルデータモデル, OPの方法, そしてCで詳しく紹介するKawaguchiの課題での方法のそれぞれの推定結果を図5.1に示す43. OPの方法は, 多項式回帰とカーネル回帰の両方を試したいところだが, カーネル回帰は既存のパッケージを使いまわせず実装にも時間がかかるので省略した. また, 確率推定をGAMやランダムフォレストに置き換えたケースについても, 結果にほとんど違いがなかったため省略した. Kawaguchiの課題では一般化モーメント法(GMM)で計算しており, その条件の特定は今回のデータとも合致しているが退出行動を省略しているためバイアスが発生することが予想できる(やる気があれば本来の課題との結果の違いを比較すると面白いだろう).

推定結果

図5.1: 推定結果

それ以外の方法については, 推定された係数のバイアス(真値との差)のみを表5.1に掲載する44

表5.1: 各推定のバイアス
Model beta[A] beta[L] beta[K]
OP (poly) -0.250 -0.046 0.206
OP (GAM) -0.244 -0.047 0.200
OP (RF) -0.242 0.032 0.130
OLS -0.100 0.794 -0.696
Within 1.335 0.791 -0.746
Between -0.103 0.791 -0.690
Twoway 1.331 0.792 -0.741
FD -0.999 0.780 -0.804
RE -0.100 0.794 -0.696
AB (twoway) 1.440 0.840 -0.833
AB (indivi) 1.550 0.818 -0.987
BB (twoway) 1.508 0.823 -0.931
BB (indivi) 6.133 1.119 -6.326
GMM (Kawaguchi) 0.079 0.038 -0.311

  1. estprod`はOP法の実装といいつつ企業の途中退出を考慮していない上, 退出のないデータに当てはめても全く違う結果が帰ってきたのでなかったことにした. また, 今回書いたOP法の各バリエーションは結果がほとんど変わらなかったため多項式の場合のみを代表して掲載し, AB/BB推定量はあまりにも誤差が大きいため掲載を省略した.

  2. 定数項 \(\beta_A\)を推定できない方法については残差の平均を定数項として扱っている. また, OP方のうちGAM, Rは第1段階を部分線形モデルで推定している.